「MECEは厳密に漏れなく・ダブりなく」という勘違い

MECEとはMutually(お互いに)、Exclusive(重複せず)、Collectively(全体に)、Exhaustive(漏れがない)の略で、主にミーシーと呼ばれます。「漏れなく、ダブりなく」の意味。難しく言うと、部分集合の和集合が全体集合に一致することです。パズルのピースがピタッと隙間なくはまる感じ。これはロジカルシンキングを学ぶ時によく教えられます。目標/実績GAPなどをMECEに分解して要因分析する。ロジックツリーを作る場合もMECEが理想です。しかし実務現場で厳密にMECEにするのは難しい。無理にやろうとすると、「その他」を多用することになる。「その他」を使うと必ずMECEになりますが、分析的にはその多用は禁じ手で、効果的な解析ができなくなります。

ということで、実務では「厳密なMECE」よりも「MECE感」が重要です。大きな漏れ、重要な漏れがなければ、多少ダブっていてもOK。これがMECE感。学問や研究ではないので、ビジネスでポイントをつかむには十分です。要するに事象を分解する場合に、次元・粒感・レベルが合っていればいいのです。例えば3つに分けたとき、すごく細かく具体的、やや大雑把、すごく抽象的、の3つになっていてはいけません。次元が合っていない。仕事が出来る人は、このMECE感が鍛えられています。少人数の打ち合わせで、ホワイトボードにがんがん文字や図を書いていく。それが上手にMECE感を担保して次元(粒感)が揃っている。まあ実際には「人・モノ・金」「品質・コスト・納期」などのフレームワークで切り口を決めている人も多いのですが・・・。MECEの既製品ですね。これもありですが、中々訓練にはなりません。

もう一つ重要なのが「ユニバース」。一体何をMECEに切ろうとしているのか? 対象を明確にする必要があります。これが意外に曖昧な場合が多いのです。議論が噛み合わない典型。例えば、生物を分ける場合と脊椎動物を分ける場合は異なる。前者に昆虫は入りますが、後者に昆虫は入らない。市場の話をしているときに、参加者のイメージがばらばらだと議論が無駄になります。市場は徒歩圏内か、東京か、首都圏か、日本か、アジアか、全世界か? 商品はどの範囲までをイメージしているのか? ターゲットは現在のユーザーか、潜在ユーザーを含むのか、人間そのものか? ユニバースをはっきりさせて、全員で合意しましょう。ユニバースは明確に、MECEはざっくりと、しかし次元は合わせる。これが仕事を効果的に進めるコツです。日常実務でトレーニングして自己成長につなげましょう。

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