「能力開発はOJT+OFF-JT」という勘違い

社員教育を推進するにあたり、能力開発の「方法」を検討します。基本的にはOJTとOFF-JTの組合せを考える。OJTは経験を含みます。というか経験の中にOJTが組み込まれる。様々な業務、市場、職種を経験することで力がつきます。OFF-JTは研修を思いつきますが、自己啓発(自学自習)も含まれる。ビジネス書を読むのもOFF-JTです。ということで、人材育成は、評価制度、目標管理、人事異動(ジョブローテーション)、研修体系、自己啓発制度等で検討されることが多くなります。

一般に、能力開発に占めるウエイトは、OJT(経験)は7割、OFF-JT(研修・自己啓発)は1割と言われます。まあ直感的にはそんな感じでしょう。あれ?足して10割にならない。2割足りませんね。そう、その2割が「薫陶」です。薫陶とはなんでしょう? 薫陶という言葉を英語に翻訳しても、ピッタリくるワードがありません。education(教育?)、 discipline(懲戒?)などが出てきます。国語辞典では「徳の力で人を感化し、教育すること」などと説明されています。日本らしい「教え」のスタイルなのかもしれません。具体的には「師からの学び」と解釈していいと思います。それが2割!

では師となんでしょう? 日本語では「学問・技芸を教授する人。師匠。先生」。英語だとmentor(メンター)です。ちなみにメンターとメンタルは全く別の単語(語源も別)。メンターは心理カウンセラーではありません。師匠です。親兄姉祖父母、学校の先生、部活の監督/コーチ/先輩、職場の上司/先輩などなど。私淑(ししゅく)という意味では、実際に会ったことのない人を師範として学ぶこともありますが、ここでは身近な人を想定します。ポイントは、国語辞典にあるように「徳がある」こと。学ぶ側からすると「尊敬できる」こと。リスペクトできる人が近くにいるかどうかです。これは運にも左右されます。しかし待っているだけでは難しい。尊敬できる人がいたら、多少距離があっても自分からアプローチする必要があります。恋愛も似てますね。リスペクトが大切。

薫陶はOJTやOFF-JTと異なり、組織側が計画的に設計するのは難しいです。本人の努力や偶発的な出会いの要素が大きい。しかしその影響力は莫大です。「あの時の、先輩の一言が今でも忘れられない」、「兄貴のあの一喝は効いた」、「あの先生と出会わなければ今の自分はいない」・・・。尊敬できる人が近くにいたらそれは宝物です。特にピンチの時の教えは本当にありがたい。自分を振り返ってもそう思います。しかし、影響力が大きい分、徳のない人に頼るとリスクもある。その点は十分気をつけましょう。その上で薫陶を大切にしましょう。薫陶から学びを得られないと20%が抜け落ちてしまう。上司の人は自分がリスペクトされるように意識・行動したいですね。

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