意思決定
SBIホールディングスの新生銀行へのTOB(株式公開買い付け)について、国が新生銀行の買収防衛策に反対の方針を固めました。明後日開催の臨時株主総会で反対の議決権を行使します。国は23%の株式を保有、SBIの20%と合わせて反対が4割以上になります。その他一部投資ファンドが防衛策に否定的なので、反対が過半数になる可能性が高い。新生銀行の防衛策とは、SBI以外の株主に、1株あたり0.8株を付与してSBI保有割合を引き下げるというものです。
今回注目したいのは、国の意思決定です。何を基準に決めたのか? 「株主としての資産価値向上」と「国としての距離を置いた立ち位置」の間で議論があったようです。資産価値向上と言っても元々税金ですから、私的に儲けようとしているわけではありません。国は、1998~2000年にかけて新生銀行に3500億円の公的資金を注入しています。株価は下がり現在含み損があるわけです。損をしないで回収するためには、1500円(TOB表明前)の株価が7450円まで高まる必要がある。そこで、SBIが新生銀行を傘下に収め、成長戦略を実行することを評価しました。一方で国が企業再編に深く関与すべきではないという慎重論もありましたが、最終的に防衛策反対で意思決定しました。米国助言会社の影響で、防衛策賛成に傾きつつあった状況を、一気に反対に舵を切った。金融庁が提示する「スチュワードシップ・コード」(機関投資家向け行動指針)の存在もあり、SBI傘下に入った方が、株主の利益にもかなうと判断しました。
株主総会二日前で、なかなかの判断です。私は、ムード的に買収防衛策は承認されると思っていました。SBI側がかなり強引な印象もありましたしね。税金投入の責任、投資家としての正統な態度、民間企業との適切な距離感、など検討要素が多いなかでの選択です。こういう右か左かという二択は難しい。しかし決めなければならない。今回は、どちらの選択の方が成長(株価上昇)につながるかを判断軸としました。正解はありません。意思決定では、判断基準の優先順位をどうつけるかを決めて、あとは腹をくくる。それが大事ですね。