仮説立案と検証
「靴のセールスマン」というお話をご紹介します。香港に靴の製造会社を経営する人物がいた。南太平洋の孤島に靴の市場が存在するかを知りたく、一人のセールマンを派遣した。その男は現地の様子を見て電報を打った。「島の人間は靴を履いていません。よってここに市場は存在しません」。納得いかない経営者は別のセールスマンを派遣した。その男から次のような電報が来た。「島の人間は靴を履いていません。よってものすごい市場が存在します」。経営者はさらに別のセールスマンを派遣した。彼は部族長や現地人にインタビューして、こう打電してきた。「島の人間は靴を履いていいません。そのため、彼らの足は傷つき、あざもできています。私は部族長に、靴を履けば島民は足の悩みから解放されると説明しました。部族長は非常に乗り気です、ビジネスチャンスは十分にあります」。お話は以上です。
この話には二つの教訓があります。まず以前にも取り上げたフレーミング効果。半分だけ水の入ったコップを見て、「半分しか水がない」ととらえるか、「半分も水がある」ととらえるか。同じ事実を見ても異なった(真逆の)判断が生じることがありえる。つまり「人によって解釈は異なる」ということです。「島の人間は靴を履いていません」までは事実なので同じ。しかしその先は変わる。私たちの仕事でも、報告する側・受ける側ともに「事実と解釈を区別する」よう意識したいです。
次にもう一つの教訓。最初の二人と三人目は何が違うのか?それは解釈に至った根拠を確認している点です。具体的にはインタビューをしたこと。現状を元に仮説を立て、それを検証した。一人目も二人目も解釈は自分なりの仮説です。三人目は実際に話しを聞いてそれを確かめた。仕事でもこれができるかできないかの違いは大きい。言われてするのではなく、自発的に行動したい。
ご紹介したこの例え話の原典はフィリップ・コトラーの著書「コトラーのマーケティング・コンセプト」だそうです。コトラーはマーケティングの大家として大変有名です。原文では一人目のセールスマンは「御用聞き」、二人目は「販売員」、三人目は「マーケター」となっているらしい。なるほど。マーケティングというと仰々しいですが、「仮説立案とその検証」は重要だとシンプルに考えましょう。実はこれ、PDCAそのものなんです。環境激変の現代、PDCAサイクルは短期化しています。じっくり計画を練ってはいられない。だからプランそのものが仮説なんです。それを即座に実行して、結果の効果測定をする。それが検証です。そしてすぐに修正。まさに高速実験の時代です。「仮説立案とその検証」を習慣化したいですね。