越境する勇気
以前、NHK「100分de名著」で、フランスの社会学者ピエール・ブルデューの「ディスタンクシオン」を特集していました。そのときの解説が岸政彦さん(立命館大学教授)でした。岸さんは社会学者で、「ネコメンタリー(猫も杓子も)」という番組(NHK)にも出演していた。猫好きの私は、猫と向き合う姿勢・愛情にすっかり共感してしまいました。ということで、今回は猫、いや社会学にフォーカスします。
岸さんいわく、社会学とは広い意味では社会問題を調査し、研究する学問だそうです。人びとは何をやっているのか?なぜそれをやっているのか?どう意味づけるのか?そういったことを地道に調べ、分析する。辞書には「人間や集団の諸関係、特に社会の構造・機能などを研究する」と書いてあります。難しそうですね。社会学は範囲が広く、国際社会から文化人類学、メディア、ジェンダー論、さらにはゲームやアイドルまで多岐に渡ります。社会を様々な角度からとらえ、多様性を認め、人々が生きやすい社会を模索することが重要です。ではこの社会学、ビジネス、経営、仕事にどう役立つのか?
「世界標準の経営理論」(著:入山章栄早稲田大学教授)を参考にします。現代の経営学は、3つの学問分野を応用して展開されています。それは、経済学、心理学、社会学。そもそもビジネスの世界は「人と人からなる社会」。社会学の理論をビジネスに応用するのは当然です。しかも、SNS、地域コミュニティ、副業・兼業などの進展により、今後ますます「つながり」、「社会性」のメカニズムが重要になる。ここで社会学発の経営理論の説明はしませんが、エッセンスを一言で言うと「ネットワークを育てよ」ということ。リアルでの強いつながりでも、ネットでの弱いつながりでも。そして「ハブになれ」ということ。そうなると情報をコントロールでき、とてつもない優位性となります。
この考え方の核を「ストラクチャル・ホール理論」と言います。ハブになるためにはどうするか?ただ社交的なだけではダメ。様々な人と仕事をする、相談する、ギブ&テイクする必要があります。コネと言うと聞こえが悪いですが、コネです。そこには一定の信頼があるはず。大企業にいると、どうしても役割分担の世界で、越境やのりしろを「悪」だと感じてしまいます。そんなことはありません。テレワークが多くなっている今こそ、勇気を出して越境したい。そしてハブ人材になりましょう。