任せる力
KHK大河ドラマ「晴天を衝け」の視聴率は約15%で、まずまずだそうです。前作の「麒麟がくる」も15%。過去10年の平均視聴率の最高は、「龍馬伝」の18.7%、最低は「いだてん」の8.2%(ちなみに大河ドラマは悪くても12%台です)。大河はだいたい戦国と幕末が交互で、戦国時代でも「本能寺の変」周辺だと、どうしても「織田信長を誰が演じるか」がポイントになる。その迫力、存在感、カリスマ性をお茶の間は期待しちゃうんですね。前回の「麒麟がくる」も信長役の染谷将太がポイントでした。
さて織田信長ですが、尾張/美濃を取った時点で100万石レベル(江戸時代換算)の大名になりました。ここで毛利のように守りに入ってもよいのですが、信長は「天下布武」の理想を掲げて京都に突入した。その後も信長包囲網に苦しんで、気の休まる時はありません。でも信長は「任せない」。全部自分で決めます。「成果主義と現場介入」にこだわった。大企業のトップなら信頼できる部下に裁量を与えて「任せる」のも能力のうちです。絶対に任せていけないのは、有事の時の最終決断。それは当然です。しかし信長の重臣は万事「それは上様のご意見を聞かなければ・・・」となる。唯一信頼して、ある程度任せていたのが明智光秀で、そばに置いていた。信長は自分が滅ぼされる30分前まで、光秀が裏切るなんて夢にも思ってなかったようです。謀反の相手を知って「是非に及ばず」と言ったのもうなずける。
ある本に載っていましたが、部下に何かを指示する場合は、号令、命令、訓令の三種類があるそうです。これは世界中の軍隊の基本教育らしい。「号令」は細かな具体的指示。忠実な実行が受令者の責任で、結果は全て発令者の責任です。「命令」は、発令者と受令者両方に頭で考えるべきことが発生し、裁量も責任も両方にある。そして「目的を達成するためになんとかしろ」が「訓令」。目的(および最低限の条件)を明示して手段は全て任せます。かなりの信頼が必要ですね。信長はほとんどが号令でした。そして最後は謀反にあって討たれた。
では徳川家康はどうして天下を取れたのか?「号令→命令→訓令」がうまく機能していたからです。三河武士団の組織力はすごかった。究極の訓令は「よきにはからえ」だと言いますが、私たちの仕事でそれは無理でしょう。実際には「命令」が一番難しいと言われています。どこまで任せるか。私たちもリーダー・メンバー間の信頼関係構築、一人一人の力量把握、などをベースに組織力を高めたい。まずは「日常の報連相」を大切にしたいですね。