良い戦略、悪い戦略
先日ある書評を見ていたら、昔読んだ本が載っていました。タイトルは「良い戦略、悪い戦略」で、著者はリチャード・P・ルメルト。戦略論の名著とされています。ずいぶん前に読んだので中身をほとんど覚えていませんでしたが、本棚から取り出してパラパラめくってみました。書評も参考にポイントをご紹介します(少し私の解釈も入ります)。
1805年、ナポレオンが英国侵攻を狙っていた。英仏海峡の制海権を巡り、33隻のフランス・スペイン連合艦隊と27隻のイギリス海軍が戦った。トラファルガー海戦です。当時の艦隊決戦の定石は、艦砲射撃&接近戦。しかし英国海軍のネルソン提督は常識を覆し、敵の真横に突っ込んだ。損失は敵艦隊22隻、英国0隻。英国側の圧倒的勝利に終わりました。これが「良い戦略」のお手本としています。①目的、②診断、③方針、④行動が大切です。①目的はこの戦いに勝つこと。②当方の戦力、敵砲手の練度、天候(当日は荒天)等を冷静に診断。③方針は「数で上回る敵の隊列を分断する」こと。④行動は、横っ腹に突っ込む。これ全部で戦略。
良い戦略は、シンプルな核があって行動が具体的です。これに対して悪い戦略の特徴は4つ。①中身がない。「顧客に優れたサービスを提供する」などというのは、わかりきったことで中身がありません。②診断がない。分析が弱いと重大な原因が抜け落ちてしまう。③目標と戦略を取り違えている。「基本戦略は、売り上げを高めて成長を実現する」などは、単に目標を言っているだけ。④寄せ集め。各部署のプランを提出させ、ただまとめているだけ。明快な核も具体的なアクションもありません。こうなると毒にも薬にもならないような漠然とした案が出来上がってしまう。ときどき「戦略は良かったが、実行がダメだった」という人がいますが、ルメルトに言わせると「それはそもそも良い戦略ではなかった」ということです。
あらためて、目的、診断、方針、行動が大切だと感じます。「戦略」というと仰々しくて、「社長や部長が考えるもの」と思ってしまいますが、計画(プラン)も戦略と同様です。PDCAのPですね。戦略・企画・計画を立案する時は、ぜひルメルトを思い起こしてください。目的/課題は何か? 現状はどうなっていて何が問題なのか? それを解決するための方針は? 具体的なアクションプランは? これらをしっかり考えて、ぜひワクワクするような「P」を作りましょう。