準備する力
私はよく「仕事では、準備する力」が大切だとお話しています。能力開発を定着・発達させるために必要なのは、「習慣化」「準備」「ざっくり」の3つです。今回は「準備」についてお話します。なぜ準備が大切なのか? そりゃあ、準備不足よりも準備万端の方がよいに決まっている。ここで言いたいのは、「人は準備によって鍛えられる」ということです。「本番で鍛えられる」というのも真実だし、スポーツでも試合を経験するから大きく成長する。しかしその背後に多くの練習・訓練・シミュレーション、つまり準備があるんです。本番の機会は限られるけど、それに向けた準備は自分で工夫できる。
仕事だと、企画・分析・事前調査・本番想定・Q&Aなどなど。例えば、交渉の場合は出席者を特定し、調べる。プレゼンの場合は、時間を計測する、会場/レイアウトを確認する、PPTをテストする。アムンゼンはエスキモーに弟子入りして、南極点踏破の準備をしました。中年の星と言われ50歳まで投げた元中日の山本昌広は、登板に向けてひたすら準備しました。
さてYouTubeである人が言ってました。採用で1000人の面接をした方です。よく次のような質問をしますと。「あなたは当社に興味があってここに来ていると思います。今日面接を受けるにあたって、あなたがした『準備』を教えてください」。これに対して多くの人は、「御社のHPを見てきた」、「就職サイトで情報収集した」といったことを答えます。そんな中でたまに「展開するSHOPを複数回りました」、「スタッフ(社員・店員など)をつかまえて直接話を聞きました」という答えが返ってくる。そして話が広がる。ちょっとしたことですが、そこに本気度、工夫、行動力を見出すことができるそうです。しかも志望動機や自己評価などとは違い、具体的な「事実」なので信用できます。相手も「準備」してくれたら素直に嬉しいですね。
つまり準備すると、自分も成長するし、相手の信頼も獲得できる。逆に準備不足で悲惨な現場も多く目にしました。初めての訪問で道がわからず、アポに遅れる。会場レイアウトが不自然、説明時間大幅超過。想定問答がないので、全部「後ほど回答します」、などなど。ビビりますね。よく聞くのが、「今は効率化の時代。準備は最小限で」。一見トレードオフに見えますが、次元が違うのです。「時間がないので、テキトーにやります」と言っているようなもの。自分のためにも、相手のためにも、「準備はしっかりする」という前提で、予定を組み立てましょう。それが本当のプロフェッショナルだと思います。