集権と分権

「戦略は、必ず集中と分散を繰り返す」と私は考えており、よくメンバーに話していました。この「集中と分散」に似ている言葉で、「集権と分権」があります。「集中と分散」が企業の経営戦略で使われるのに対して、「集権と分権」は国家運営でしばしば使われます。こちらは歴史的背景もあり、繰り返すとは言えません。例えば分権で言うと、三権分立があります。ご存知の立法、行政、司法。国家権力を、独立した機関に担当させ、相互に抑制する。これにより権力の乱用を防ぎ、国民の自由を確保するシステムです。アメリカは厳格な三権分立(大統領制)、イギリスはゆるやかな三権分立(議院内閣制)。日本はその中間ですかね。

さらに国体の概念では、もう少し大きな話になります。分権は、政教分離に代表される構造です。欧州では、教皇と皇帝。日本では、天皇と将軍。それぞれが微妙な力学で相互に牽制し合う。欧州では「カノッサの屈辱」が象徴的な事件ですね。この均衡により一定の秩序が保たれるのです。一方、集権の代表は歴史的にロシアと中国。相互牽制がないので、独裁となり、クーデター(?)により一気に王朝がひっくり返ります。中国では易姓革命と言うらしく、天の意志で王朝が交代する。天の意志は解釈なので、力による支配になる。プーチンなどは国内では大人気だそうで、必ずしも国民が分権を望んでいるわけではありません。強い独裁国家を求めている場合もあるので、簡単には語れません。

さてこの「集権と分権」を企業の組織運営にあてはめると、どんな気づきがあるでしょう。「中央集権的な本社主導と、地方分権的な場所経営」という感じでしょうか。前者のメリットは、意思決定スピードと全社通貫行動。後者のメリットは、市場密着と機動的適応行動。デメリットはその裏返し。「本社は市場がわかってない」、「現場は言うことをきかない」という声が聞こえてきそうです。で結局、場所を尊重しながら本社が緩やかにリードする、というパターンが多くなります。

「集権と分権のどちらが正しいか」ではなく、「集権か分権か、あるいは中庸か、いずれかにスタンスを決める」ことが大切だと思います。さらに具体的な業務レベルで言うと、一連業務と分割業務になります。前者のメリットは、全体感の把握、戦略性の発揮。後者のメリットは、専門性の深化、効率性アップ、不正/エラー防止(職務分掌)、など。「どのスタンスをとるか」を判断する場合、世界史や日本史も参考になるかもしれませんね。

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