「規模の経済」と「経験曲線効果」
似て非なるものってありますね。経営学でよく混同するのが、「規模の経済」と「経験曲線効果」。両方ともコストが下がりますが、ざっくり言うと前者は量の効果で、後者は時間の効果。規模の経済=一度にたくさん作ることによるスケールメリット→「1回あたり生産量」で決まる。経験曲線効果=同じ作業を何度も繰り返すと上手くなってコストが下がる効果→「過去の累積生産量」で決まる。
まず規模の経済。一度にたくさん作ると製品1個あたりの固定費が下がって、単位コストが低減します。固定費って機械設備や人などにかかる費用。例えばタクシー代(車両・運転手)。1人で乗っても4人で乗っても費用は同じ(固定)ということ。4人で乗ったほうが単位コストは安いですね。一度にまとめてやったほうが、なにかとパフォーマンスは高い。
一方の経験曲線効果。経験を積むと作業のコツをつかんで仕上がりが早くなるし、失敗も減る。初めてやる人よりもベテランの方が効率がよい。この効果は量に左右されず、規模が小さくても発揮されます。だから規模の経済と経験曲線効果は同時に実現できる。「なるべくまとめて、なるべく同じ人間が同じやり方を続けろ(コロコロ変えるな)」となります。
これを日常業務で応用するとどうなるでしょう? まず、まとめた方がいい。同じシステムを使い、なるべく大きな数(DATA量)をいっぺんに回す。「集約」ですね。ただしここで「まとめる」の中身が重要になります。単に様々な業務を機械的に集約しても、個々別々だとスケールメリットは出ません。『標準化』する智恵・工夫が必要です。
次に経験曲線効果。このセオリーだと「同じ担当者が、一度決めた仕組を変えずに繰り返す」となります。ん?でも「常に変革!改善!ジョブローテーション!」という声も聞こえますね。そうなんです。経験曲線効果はここが難しい。線引きや目利きが必要なのです。閾値(効果低減)を見極める。時代・環境の変化に機動的に順応する。一方でノウハウの蓄積・伝承も大切です。
「変革」も手段なので、変えるべきもの・時期と、変えてはいけないもの・時期があります。コスト削減のつもりが、コロコロ仕組を変えて、「初期投資ばかりで逆にコストアップ」なんてこともある。今の時代、規模の経済と経験曲線効果の同時実現が求められます。ちなみに「範囲の経済」という効果もありますが、ややこしいので飛ばします。ここでは量という概念と時間という概念が大事です。計画を策定する時は、この二つを意識してコストシナリオをつくりましょう。