専門性
本日は「専門性」についてお話します。学生が社会に出て、はじめに学ぶのはビジネス基礎リテラシーです。ビジネスマナー、報連相、PDCA、パソコンスキル、文章の書き方など。その上で、まず自分の領域の専門性(①テクニカルスキル)をつける。合わせて行動力(②ヒューマンスキル)が鍛えられていきます。そして年齢や役割が上がると、徐々に思考力(③コンセプチャルスキル)の重要性が高まります。これは、ロバート・カッツというハーバード大学教授が整理した「人材開発に必要な3能力」に近い考え方です。
この中の専門性は、例えば会計担当者にとっての経理・財務の知識など。自分の業界や職種の知識、仕事の進め方です。「保険を知らなければ、保険は売れない」というわけですね。未経験で入社した新人も、引継ぎ・OJT・日常業務等を通じて経験値が高まり、専門性が徐々に鍛えられていきます。これはすごいことで、本人からするといつの間にか身についた専門性も、外から見るととても太刀打ちできない印象です。一方で環境変化が著しい昨今、昨日までの経験値が一気に時代遅れになるリスクもはらんでいます。やはり日常的な感度アップと学びが欠かせませんね。特にデジタル化には注意が必要。
「井の中の蛙大海を知らず」という言葉があります。これは中国で生まれたことわざ(荘子)で、「井戸の中にいるカエルは海を見たことがないため、視野が狭い」、つまり「視野の狭い人だね」というネガティブな表現です。しかしこれには続きがあります。「井の中の蛙大海を知らず。されど空の深さを知る」。日本人が後から独自に付け加えたらしいです。「自分の道を突き詰めたからこそ、その世界の深いところまで知ることができた」という意味で、一生懸命に専門性を磨くことの価値をうたっています。もちろん狭すぎるとダメですが、深さが広さにつながる。そこでの能力・経験・知見が組織に大きく貢献する。そんな感じです。
そういえば同居の猫(保護猫)は、里親で引き取ってから一度も家から外に出していませんが、天気の良い日はベランダに出て、じっと空をながめています。空の深さ、空の青さを感じているのかもなあ。冒頭に戻ります。カッツの言うテクニカルスキルと専門性はやや意味が異なりますが、あえて話をシンプルにしました。いずれにせよ、個人、チーム、組織全体で、この専門性を磨き上げたいですね。