「まずは裏付け」という勘違い
仕事をしていると、ことあるごとにロジックを求められます。その主張の根拠は? 事実の裏付けは? と聞かれる。裏付けがしっかりしていないと、説得力に欠けます。なので、常に事実を重視して、データの収集に時間をかける人がいます。しかし、最初からこれだと非効率だし、大胆さが足りません。最終的な出力時には裏付けが必要ですが、途中段階では仮説・仮定・仮決めでどんどん進めるべきです。概ね道筋がついたら仮説を検証して、裏付けを整備する。状況によっては「自明の理」というのもありです。ある程度の事象を元に、本質を仮置きして進めてみる。概念的思考とも言います。原因を分析する思考経路とは逆に、事象からパターンを導き出す帰納法的な思考です。
仮説がなぜ大事なのか? まず、大胆な発想が可能になります。経験、直感、知識などを総動員して、細かい数字に縛られずに、自由度の高い、柔軟で魅力的な主張を作る。根拠が薄くても、まだ序盤だからいいのです。早い段階で報連相した場合に、上司から「裏付けは?」と聞かれても、「現時点の私の仮説です」と言い切りましょう。この段階で「仮説ではだめだ」という上司はいないでしょう。もう一つのメリットはスピード(時間短縮)です。ある本で「最初の直感的な仮説は9割方正しい」という内容を見ました。本当かどうかはわかりませんが、1割の修正のために、最初から膨大なデータを収集するのは非効率です。検証に値する仮説が出来た段階で、裏を取りましょう。このクセがつくと、仕事のスピードが格段に上がります。
大切なのは、「正しい設問」と「確からしい解答」です。そして「確からしい解答」は魅力的であってほしい。つまり課題設定と仮説構築。上司は「裏付けは?」と聞く前に、「なぜその課題なのか?」、「あなたの仮説は?」と問うべきです。最初は「裏付けのない仮説」でいいのです。スジがよければ、裏付けに進む。実際の仕事は、仮説・仮定・仮決めの連続です。これをテンポよく、感度よく、楽しげにやってのける人は成長します。組織貢献も大きい。内部の突っ込みを恐れて、最初からQ&A作りのようになっている人はなかなか伸びません。ただし、当然ですが仮説とヤマカンは違います。そこには論理、経験、知見、スキルが必要。それがあるなら、思い切って自分の仮説を打ち出しましょう。「まずは裏付け」という勘違いをしている人は修正しましょう。そして上司の方は、ぜひ部下の仮説を引き出して、成長を促してください。