キャリア開発の勘違い
学校を卒業して新社会人として会社に入ると、キャリア開発について学ぶケースがあります。そのとき、ベースになるのが「should・will・can」という考え方。shouldをmustとする場合もあります。「すべきこと・したいこと・できること」。「①期待・②意志・③能力」と言い換えてもいい。さらに中身を展開します。①は、お客様のニーズ、自分に与えられた役割、組織が自分に期待していること。②は、好きなこと、自分のモチベーションが上がること。③は、今までの経験や学びを土台に現在発揮できる力。この3つの輪が重なる部分が進むべき道、という考え方です。そして、「この重なりを大きくしましょう」というメッセージになります。
これはとても大事な考え方です。例えば、起業する場合もこの考え方を重視します。市場での顧客ニーズはあるのか? 自分が本当にやりたいことか? 自分の強みを活かせる得意分野か? この3つを自らに問います。逆に言うと、お客様に求められてもいず、いやいやながら、苦手な領域で勝負しても勝てるわけがありません。経営計画やマーケティング戦略にも応用できる理屈なのです。ただし、会社内のキャリア開発で応用する場合、特に新人に対しては、この「should・will・can」の順番に気をつけなくてはなりません。まず期待役割があって、そこに向けてモチベーションを上げる。そして経験と学びを積み重ねて能力を高める。慣れないうちはモチベーションが上がらないかもしれませんが、徐々に面白みがわかってきます。新人が最初からベテランと同等の能力があるわけでもありません。時間がかかるのです。だから初めはゴチャゴチャ言わずに、与えられた目の前の仕事をしっかりやり切ることからスタートです。しかしキャリア研修などでは、この順番をあまり教えないので、3つの輪を同等に扱い、勘違いが発生します。やりたくない、できない、自分には向いてない・・・となってしまう。でもそんなもんです。最初からshouldにwillとcanがうまく重なるなんて、ほとんどありえない。繰り返しますが時間がかかるのです。
経験が浅いうちは、3つの輪の大きさが違うし、形も歪(いびつ)なことが多い。社会人ならまだ自己修正できますが、学生の場合はもっと勘違いする。例えば小学生の中学受験。進路決定なのでキャリア理論(3つの輪)が応用できると思っても、なかなかうまくいきません。親「おまえの気持ちはどうだ?」。子ども「野球が好きだし、一番得意なんだ。だから受験はしないで野球に集中したい」。不完全ですが、これはこれで一応輪の筋は通っています。だから親が上手にフェアにshouldを説明しないといけない。willが歪で、canが小さいかもしれません。会社員の場合は、上司が導く役割です。結局、「should・will・can」の理屈が一番効くのはベテラン社員ということになります。セカンドキャリアを考える際などは最適でしょう。年齢・経験・順番を考慮しないで、いきなりキャリア開発理論をあてはめる「勘違いケース」が多いので気をつけたいですね。