新しい働き方
春闘で、経営側と労働組合側との交渉がスタートしましたが、一致する論点と異なる論点が鮮明になっています。方向性が同じなのは、「長時間労働の是正」「雇用の安定化」「多様な人材の活躍」等。女性として始めて連合会長に就任した芳野氏は、意欲や経験のある女性や高齢者などの幅広い人材活用を強調しています。その上で、長時間労働是正、賃金格差是正、仕事と育児・介護の両立などを重点項目に掲げています。経団連も、このあたりの基本的考え方は同じです。
一方で各論では対立もあります。特に目立つのが、「ジョブ型雇用」と「裁量労働制」です。ジョブ型雇用は、職務の明確化、評価方法整備を慎重に進めないと、賃金の切り下げに使われかねないと労働側は懸念しています。裁量労働制についても、実際の業務遂行内容を上司が決めているケースがあることを問題視している。安易に拡大すべきではないという主張です。「柔軟で機動的な人材マネジメント」と「中長期に生活を支える安定的雇用」という観点でぶつかっています。私は健全な議論だと感じます。特にジョブ型雇用についてはよく議論していただきたい。従来の日本的なメンバーシップ型雇用を、現在の社会・経済混乱を背景に欧米的なジョブ型雇用に転換しようという流れがあります。ジェネラリストの育成からスペシャリストの育成に舵を切ろうとしている。メリットもデメリットも大きい。よい機会なので、しっかりあぶり出して建設的に経営・労働につなげてほしいです。