怒りへの対処
経団連は、職場でパワハラの相談が増えている大企業が4割以上に上るという調査結果を明らかにしました。ハラスメントの相談件数が5年前と比べて増えたと答えた大企業の割合は、パワハラが44%、セクハラが11%。2020年にパワハラ防止法が施行され、社内相談窓口が強化されたことによって、顕在化したケースも多いのだと思います(経団連もそう分析している)。実際にパワハラが増えているのかどうかはよくわかりません。実感として、上司が部下を強く叱るなどは、しにくい環境になっている気がします。
パワハラと指導は似て非なるもの。最近の若者は「怒られる」という経験が少ないようです。「怒る」と「叱る」は違うとよく言います。「叱る」は対象(相手)が存在するので指導。先輩後輩や上司部下などの関係性があります。これに対して「怒る」は自分の感情です。それが指導になる場合もあれば、パワハラにつながる場合もある。学生時代に親や先生に怒られる機会自体が減っているようです。昔懐かしの雷親父もほとんど見なくなった。先生も、ハラスメントにならないよう企業同様配慮している。新入社員がよく「学生時代に怒られた経験が少ない」と話していました。その分、会社に入ってから怒られると、とても気にする。
最近はアンガーマネジメントなども広がっていますが、人間なので働いていると腹も立つ。怒ることもあるでしょう。そこには、指導とハラスメントが混在しているかもしれません。本質的には、怒る側が、指導を心がけ、ハラスメントを封じるべきです。しかし自己防衛的には、受け手側も耐性を鍛える必要がある。メンタルを強くしたい。そのためにどうするか? 場数を増やすことです。一人の特定の人との場数ではありません。多様な人材と接して、相手の怒りへの対処を学ぶ。最近は、オンラインやソーシャルディスタンスで、その機会が減っています。要件だけの伝達で、感情のやりとりは少ない。相手の表情や変化もよくわかりません。感染症沈静化後は、意識して生の接点を増やす努力が必要かもしれませんね。