組織風土
「言うべきことを言わない、言われたことだけしかしない姿勢」。みずほに対して金融庁が表現した言葉です。言うべきことをしっかり言うタイプの社員も実際には多いはず。しかし結果がひどいと、上層部の姿勢が全社員の象徴・印象になってしまう。一般社員は大変悔しい思いをしていると想像します。みずほフィナンシャルグループは、相次いだシステム障害の責任をとって、トップ3首脳が退任することになりました。今年2~3月で立て続けに4件の障害が発生し、再発防止策を講じたにもかかわらず、8~9月に4件のトラブルが発生しました。これはさすがにお粗末。金融庁も大変厳しい指導を行い、「自浄作用が十分に機能しているとは認められない」としました。
信用第一の銀行が、なぜこんなことになったのでしょう。優先順位の間違い(コスト>顧客)、間接機能の軽視(保守運用人員削減)、リスクマネジメントの脆弱性、社外取締役の機能不全、マルチベンダー方式(三菱や住友はシングルベンダー)など要因は様々です。それらを総合すると、冒頭の「もの言わぬ組織」ということになります。みずは、22年3月期に最終利益が5000億円台に回復する見通しで、坂井グループ社長の手腕は高く評価されていました。1万9000人の人員削減を主導してきた。しかし内実では、世の中の資金の安定的な流れよりも、社内のコスト削減を優先しました。経営陣の責任は重いですが、やはり社内カルチャーも問題大です。危機管理意識が低い。2月の障害時には、幹部への連絡は電子メールで、受信確認が遅れている。銀行頭取はトラブルをネットニュースで知ったそうです。
みずほは2000年に日本興業銀行、富士銀行、第一勧業銀行が統合。旧行意識が強かったため、意識的に融合に努めてきました。しかし、「融合意識が強すぎて、問題を見逃す雰囲気」だったそうです。結果、「言われたことだけしかしない姿勢」になっていった。摩擦を回避して「和」を重んじたということでしょうか。現在、社員の士気低下で人材流出も懸念され、他行の中途採用で「みずほ出身者が増えている」そうです。
組織風土ができるには時間がかかります。一般的には、新トップの変革宣言、組織改変、行動指針プロジェクト、ルールの見直し、などが行われます。しかし、内側も大事ですが、まずは外側の信頼を回復する必要がある。本気の再発防止です。目の前で火が燃えているときに、「消防士を育成しましょう」という発言はナンセンス。まずしっかり火を消しましょう。その上で組織風土の変革。私たちも大いに教訓にしたい事例です。