マトリクス組織
こども庁の創設が23年以降に先送りされました。当初は22年度設置を目標としていましたが、関係省庁間の調整に時間がかかるとのことです。こども庁は、児童虐待や貧困問題等の課題に総合的に対応し、こどもに関わる政策を一元化する狙いがあります。一元化という意味ではデジタル庁に近いのでしょうか。一方、「勧告権」で関係省庁に政策改善を要請する権限を持つらしいので、金融庁のように監察的な機能も担うのかもしれません。とりまとめだけではなく、役割そのものも一部移管するので難しい面があります。例えば「幼保一元化」。現在、幼稚園は文科省、保育所は厚労省、認定こども園は内閣府が担当しています。これを引き剥がし、新設のこども庁が一元的に担うという構想。確かに、理屈と現実のギャップを解消するには時間がかかりそうです。
このこども庁はマトリクス組織なのでしょうか? デジタル庁はマトリクス組織です。例えば、会社設立のワンストップWEB申請などは、すでに所轄がデジタル庁に変わっていて、すごく進化している印象があります。法務省、財務省、厚労省などに分かれていた諸手続が一括で申請できる大変便利なシステムです。デジタル化に弱い官僚組織を専門集団が引っ張るという構造ができつつあるのかなと推察します。一方、金融庁は機能の分離です。財務省ではなく、内閣府の外局として、預金者や投資者の保護を図ります。今回のこども庁の位置づけについては、私はよくわかっていません。
一般的にマトリクス組織は難しいです。企業でこの体制を活用する場合は、ほとんどが時限プロジェクトです。長い期間マトリクス組織が安定的に機能しているケースは少ないように感じます。例えば、品質保証部門など。これは各事業の品質管理をとりまとめますが、責任を持つわけではない。責任はあくまで事業・ライン。品質保証部門は、客観的な監督、指導などを担う場合が多いです。金融庁に近い。なぜマトリクス組織は難しいのか? 責任の所在があいまいで、2トップ制になり、指揮命令系統が混乱するからです。上手くいっても属人的な人間関係に頼る場合が多い。従って、通常はプロジェクトで短期の成果を出して、役割を終えたら解消する組織です。
課題解決を、いきなり組織改革で行おうとすると上手くいきません。「組織改革ありき」はダメ。本質的な解決方針を打ち出し、具体的な解決策を立案・実行する。そのために組織改革が必要であれば取り組む。「組織は戦略に従う」ですね。