多様性
最近読んだ本のタイトルは『心が休まるアドラー心理学』。猫とアドラー心理学を結びつけたやや無理やり感のある本です。私は、猫もアドラーも好きなので読んでみました。内容は「猫の話が主」という印象です。私は家で二匹の猫(保護猫)と暮らしているので、それなりに興味深く読めました。その中で特に印象に残っている部分を紹介します。
自然界で生物が種を存続させるために最も大切なことはなんでしょう?それは強さでも賢さでもありません。「遺伝的多様性」です。この遺伝的多様性が小さいと絶滅するリスクが高まるんですね。種があまりにも同質だと環境の大きな変化に対応できず、全滅する可能性があるということ。例えば種全体が寒さに極端に弱い場合、異常寒波で全滅する。寒さに強い、暑さに強い個体が適度にばらけている場合は全滅回避できる。つまり多様性が発達していることが、種の永続のために非常に重要だということです。
さて、会社経営で多様性というと「多様な人材の化学反応によって新たな付加価値を創造する」などという目的が多く語られていますね。価値観として多様性(ダイバーシティ)を掲げている企業も多いです。イノベーションと多様性をつなげている。一面的に見ると多様性は「攻め」の要素と思われますが、実は「守り」という面でも非常に重要なんですね。事業、商品(ブランド)、人材などのポートフォリオ(配置・バランス)が偏ると経営リスクにつながります。体力のある大企業ならまだしも、中小企業はリスク分散が死活問題。売上が大得意先1社に偏ると、取引終了で倒産ということも考えられるからです。一枚岩、一致団結は大事ですが、これは瞬発力が必要な短期集中の場合。「集中」と「分散」は繰り返します。長い目で見ると多様性がとても重要なのです。多様性が排除されると「集団浅慮」という現象が発生します。有名な例は「ケネディー大統領のキューバ侵攻作戦の大失敗(ピッグス湾事件)」(詳しくはネットで)。
本自体は「猫の本」なので、猫好きの方は読んでみてもよいかもしれません。最後のほうはホロッとしてしまう記載もあり、私にとってはよい本でした。