「PDCAは計画・実行・確認・改善」という勘違い

学生が新卒で企業に入社して成長するためは、「PDCA」が最重要です。これは基本中の基本ですね。当たり前すぎて感覚が麻痺している人も多いでしょう。結果として、形だけ、言葉だけの抽象的スローガンになっている場合が多い。ここでPDCAを根っこから考えてみましょう。一般的にPDCAは、「1.PLAN→2.DO→3.CHECK→4.ACTION」、日本語では「1.計画→2.実行→3.確認→4.改善」と言われます。もうこのあたりから実態に合わなくなっています。将来も経済成長が続く想定で、「計画を重視し、それをしっかり運営管理する」姿勢。年間計画を策定し、スケジュールに従って実行していけば成果が出るというシナリオです。反省を活かしてまた次年度計画を策定する。しかしご承知のとおり、事業環境は刻々と変化し、競争も激しさを増し、将来は極めて不透明です。こんな時代に「まず計画を作る」からスタートするのはとても難しい。従来のPDCAは、「課題はすでに与えられている」という前提に立っています。しかし今大切なのは、自分で正しい課題を設定すること、問題を発見すること。従って「計画」の前に、最初に「課題」がくるのです。

次にPLAN。計画実行サイクルはどんどん高速化しています。実際は、走りながら考えているような状態。年間計画をきっちり細密に立案するのは非生産的、いや不可能です。「計画は守るもの」という既成概念から一旦離れ、PLANを「仮説」と考えましょう。ただしNO

PLANではありません。その先を見据えた「機動的な目論見」といった位置づけです。また、たまにPLANが単なるスケジュール表(カレンダー)になっている場合がありますが、これも大きな勘違い。課題を解決するための仮説=作戦になっていなければなりません。

そしてDO。「実行」と言えばそのとおりですが、仮説とセットで捉えて「実験」と考えましょう。しかも「高速ビジネス実験」です。ここでTODOリストが必要となります。「仮説」が抽象的に止まらないよう、このDOの段階で具体化する。これは従来の「計画」に近いかもしれませんが、やって当然なのでもはやDO。やらないのは論外です。

さて最も勘違いされているのが、CHECK。これは日本語が悪い。「確認」ではありません。「評価」です。DOしてどうだったのか。効果はあったのか? あったとしたらその理由は何か? 効果がなかったとしたら、それはなぜか? これを明らかにする。しかし実際は、多くが「やったか、やらなかったか」という「実施の有無の確認」に終わっています。正しくは「評価」であり、効果測定および要因分析です。要は「やりっぱなしにしない」ということ。やっているのが前提です。ちなみに「実施の有無の確認」はDO。従って、従来の「計画・実行・確認」はすべてDOになります。

最後にACTION。「改善」というと漠然としているので、「修正」と捉えましょう。具体的には「TODOリスト」の書き換えです。これをいかに素早く修正するかが勝負。特に競争の最前線ほどスピードが求められます。「TODOリスト」の書き換えなので、つながるのはACTION→DOです。つまりA→D→C→A→D→・・・と回転する。Pまで修正するのは仮説が否定されたときで、四半期単位程度ですね。日常的にはC→A→Dで高速に回していきます。

勘違いされているPDCAにありがちな例。課題:業務効率アップ(不明瞭)。計画:上半期に業務上の問題点を洗い出し、下半期に業務の見直しを行う。実行:概ね実施。確認:一部未実施あり。改善:次年度は100%実施する。「いやいや、それはないよ」と思うかもしれませんが、実際はこれに近いものが多いのです。私はメンバーとよくこんなやりとりをしました。「今、あなたが取り組んでいる課題は何?」→「○○です」。「それに対するあなたの仮説は何ですか?」→「えーと、△△です」。「実際にやった施策は効果があった?」→「あまりありませんでした」。「なぜ?」→「それはおそらく・・・・・」。こんな感じです。この課題・仮説・効果分析のキャッチボールは間違いなくメンバーの成長につながります。

以前のPDCAは「1.計画→2.実行→3.確認→4.改善」、これは計画のマネジメント。今求められるPDCAは「1.課題→2.仮説→3.実験(以前の計画・実行・確認)→4.評価→5.修正」、これはもはや課題解決です。だから当然成長に直結する。ポイントは、課題設定から始めること、効果測定/要因分析をすること、そして高速で回すこと。「PDCAは計画のマネジメント」というのは勘違いで、「PDCAは課題解決のエンジン」です。と同時に人材育成・成長のエンジンとなります。しかし、PDCAと課題解決を別物と捉えている人がとても多いです。PDCAは業務のお作法だと理解している。これはとてももったいない。働きながら思考力、行動力を鍛える優れたシステムです。スケジュールをこなす日常と、自ら課題を設定して解決する仮説検証、どちらが訓練になるかは言うまでもありません。1周するごとに高度が上がる。「適切なPDCA」は、『らせん回転の成長』の原動力なのです。

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