人材開発の要諦
本日は企業における人材開発について、考えてみたいと思います。まず、会社でヒトが成長する流れ。本人に「仕事を通じて成長したい」という意志がないと始まりません。「新卒で入社して、横一線で少しずつ会社が育成してくれる」という時代は終わりつつあります。メンバーシップ型雇用からジョブ型雇用へと変転している。環境変化にともない、この成長意欲は高まっていると感じます。組織の一員として、チーム、会社、そしてお客様、世の中に貢献する。貢献することが成長につながる。成長によってさらに高い貢献が可能となる。貢献実感と成長実感の好循環によって、日々の仕事が充実します。長く働くためには、たとえ小さくてもこのサイクルを作っていくことが肝要です。
本人に「成長したい」という意欲があれば、会社はその環境を整えます。戦略、評価、報酬の連鎖です。明快な経営戦略があり、それが社員全員の腹にしっかり落ちている。戦略実現のために、全社目標が組織、個人の目標につながっている。個人の活動が、業績(目標達成)と能力で適正に評価される仕組みがある。評価の結果が公正に賃金に反映される。そして評価の目的は人材育成であることを全員が理解します。賃金決定はその結果です。理想論かもしれませんが、この理想は追い続けるしかありません。
環境(仕組み)が整えば、運用です。人材マネジメントのPDCA。上司と部下との目標合意→課題解決策の立案→アクションプランの実行→定期的進捗確認(報連相)→四半期面談→プラン修正→評価→フィードバック→次期目標設定・・・。アクションの効果測定(結果分析)を上司と部下で討議します。人事では「壁打ち」とも言いますが、ここではリーダーの上手な「問い」が重要です。「それはなぜ?(Why)あなたはどうしたいの?(Will)」。これがOJTになります(マニュアルを説明するのがOJTではありません)。
この一連の流れを補完するのが、研修などのOFF-JTです。人材の成長貢献ウエイトは、経験+OJT=70%、薫陶=20%、研修+自己啓発=10%、と言われます。従って、「人材開発のために、まず研修制度を整備しよう」というのは間違いです。上記の仕組みを効果的に運用し、適度にジョブローテーションする。そこに節目の階層別研修や専門技能研修を差し込む。あとは薫陶です。尊敬できて影響力の大きい存在が身近にいればベスト。師匠です。コーチとは違います。どこかで(できれば早い段階で)出会いたい。以上が「人材開発の要諦」です。なかなかこのとおりにはいきませんが、定石として押さえておくことが大事ですね。