聞く力
岸田文雄氏が自民党総裁に選出されました。事実上第100代首相に決定です。総裁選では「発信力」より「安定感」が決め手になったようです。岸田氏本人は「聞く力」をアピールし、「寛容さ」を掲げています。強烈なリーダーシップというよりは、チーム力を強調。ここまで安定感を前面に出す首相候補も珍しかった。敵が少ないので、議員票が集まったのでしょうかね。一方で、実行力、発信力を不安視する声も大きい。でも、一国の首相に立候補して、一度落選してもめげずに2回目で勝ちきる実行力はすごいと思います。今回も迷いなく一番乗りで手を上げました。「ノリの実行力」ではない「地に足のついた実行力」という印象です。東大を3回挑戦してダメで、早稲田に行った経験も関係あるかも。
チーム力を強調する岸田さんは、議員総会で「全員野球で党が一丸となって選挙に臨もう」と言っています。開成野球部出身らしい発言ですね(意外に開成はバンカラです)。そして本人が最も大切にするのが「聞く力」。若い頃は、衆議院議員の父の秘書として、地元周りで靴の底を減らしました。しかし国会議員になってからの出世は遅れます。「もっと目立て」の声もあった。これに対し、「目立つだけが政治家ではない。地道な作業が大切」と自分らしさを堅持。いいですね。外務大臣を4年7ヶ月と長く担い、一気に首相候補まで押し上がりました。菅さんに負けた時は、もうダメかな、と私なんかは思いましたが、なんのその。ぶれずに「聞く力」を強調し、全国行脚を続けていました。
「聞く力」で私が思い出すのは、「項羽と劉邦」の劉邦です。項羽がカリスマ、スーパーマン、ワンマンだったのに対して、劉邦は凡人、聞き役で周囲の協力を上手に活かしていた。結果、劉邦が項羽を滅ぼして、前漢を興しました。劉邦はとにかく「聞く力」が優れていた。しかもこれによって周囲を巻き込み、協力・信頼を得ることができました。「聞く力」は、情報収集だけでなく、仲間を広げる効果もあるんです。劉邦の場合は少しやんちゃで、愛嬌があったのも大きい。気さくな性格で、周囲に愛されていました(ここは岸田さんと違う)。世の中の成功者(特に大金持ち)は、例外なくこの「聞く力」が高いそうです。マーケティングの本質であり、コミュニケーションの原点なのかもしれません。これから岸田さんには大いに期待したいのと同時に、自分も「聞く力」を鍛えたい、そう思いました。