準備の大切さ

私は前職では人材開発(社員教育・研修)を主に担当していました。社員のみなさんには、よく「仕事は準備だ」とお話していた。ぶっつけ本番で成功した武勇伝は、「たまたま」です。しっかり準備することでミスは減り、業務品質も向上します。その準備が結果に大きく作用することがある。よく例に出したのは、「アムンゼンとスコットの南極点踏破」と「八甲田山雪中行軍」。内容は割愛しますが、準備万端なケースと、そうでないケースの対比が明快です。また、NHKの番組「プロフェッショナル」で、最後に「プロフェッショナルとは」について出演者が語ります。「常に準備を怠らず、全力であたる人」という言葉に、私は大いに同意します。外科医、プロアスリート、同時通訳者、消防士など、シビアな真剣勝負師のコメントに多い印象です。

昨日NHKの番組「知恵泉」で、「承久の乱」を取り上げていました。ここでも準備の重要性を考えさせられた。1221年(承久3年)に、後鳥羽上皇が鎌倉幕府執権の北条義時に対して討伐の兵を挙げて敗れた兵乱です。負けた後鳥羽上皇は隠岐に配流され、以降、明治維新まで、朝廷に対する武家政権の優位を決定づける転機となりました。幕府も将軍承継問題でバタバタしていましたが、「御恩と奉公」を軸にした理論武装、有力スタッフの配置、情報対策など、準備をした。そして有名な北条政子の演説です。「頼朝様の恩は、山よりも高く海よりも深いのです。もしこの中に朝廷側につこうと言う者がいるのなら,まずこの私を殺し,鎌倉中を焼きつくしてから京都へ行きなさい」。ここで幕府・御家人の心を一つにして、戦に臨んだのです。行動も速かった。一方の後鳥羽上皇側は明らかに準備不足です。というか、都合のよい思い込みだけで動いている。「宣旨を出せば,日本中の武士が集まってくるに違いない」。周りに諫言できる人物もいませんでした。

準備の大切さは、日常業務でも実感します。準備不足でプレゼンの場で混乱、商談会場に間に合わない、こんな状況では本来の力は発揮できません。プロだからこそ準備を怠らない。この姿勢がとても重要だとつくづく思います。

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