ブランドイメージとカスタマージャーニー

トヨタ自動車が、スポーツ用多目的車(SUV)の「カローラクロス」を国内発売しました。昨年タイで発売して、新興国を中心に販売が好調だったので、日本での発売に踏み切ったようです。30~40歳代のファミリー層を主な顧客として見込んでいます。カローラは1966年に発売、以降大衆車として親しまれてきました。私の記憶では、30年ほど前にカローラⅡというのがありましたが、あれはワゴン車で、SUVではないのね。昔からトヨタといえば、カローラ、マークⅡ、クラウンでしたね。「いつかはクラウン」。

日本国内のSUV市場は活況です。2020年のSUV販売比率は24%。この5年で3倍に伸びています。運転席からの見晴らしが良くて、車内も広く、人気が高いです。全世界的にもどんどん拡大しているようです。SUVは4割を超えるというシミュレーションもあります。機動的で運転しやそうだし、見た目もいいですしね。

企業が新商品発売をする場合、既存商品のシリーズとして出すか、新ブランドとして出すかを検討します。どっちが得か。どちらの方が、お客様の支持を得られるか、売れるか、を考える。マーケティング的には、ブランドイメージとカスタマージャーニーの二つを考慮します。既存シリーズは、ブランドイメージが合致するかがカギで、カスタマージャーニーは楽です。新ブランドは、ブランドイメージは自由に創れるけれど、カスタマージャーニーは一苦労です。トヨタのSUVだと、ずいぶん前に「RAV4」という商品が発売されました(今でもあります)。CMにキムタクを起用して、大々的にプロモーションをかけた。ゼロから認知をとって、市場浸透させるのは大変だったと思います。でも、スポーティでかっこいいイメージのホンダに対抗して、自由にブランディングできました。一方今回のSUVはカローラブランド。蓄積した広告投資で認知はアドバンテージがあります。だからカスタマージャーニーは楽。しかしその分、大衆的なブランドイメージがあるので、それがどうかというのがポイントです。「今ならそれほどダサいイメージはなく、ファミリー層にはポジに受け止められる」という判断なのでしょう。

広告投資が限られる昨今の厳しい経営環境では、ゼロから新ブランドを立ち上げるのは容易ではありません。まずは、すでに蓄積効果のあるシリーズ展開を先に考えてみる。その上で、新ブランドとのオプション比較をする。開発担当者は、新ブランドでやりたいですけどね。メーカーの商品戦略は、経営戦略そのものなのです。

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