寛容さ

ドイツのメルケル首相(67)が政界を引退します。「欧州の女帝」とも呼ばれ、16年間ドイツの首相を務めました。ドイツは経済も比較的安定していて、混乱は少ない印象ですが、メルケルさんの政策として特徴的なのは難民政策です。彼女は、東ドイツ出身で、36歳まで社会主義体制に自由を制限されて暮らしていました。牧師の家庭に生まれて、キリスト教の博愛精神を身につけてもいます。そんな経験が、難民に対する「寛容さ」につながったようです。ドイツは2015年に中東などからの難民を人数制限なしに受け入れています。2016年には難民申請件数が75万人に膨れ上がりました。その後、年間20万人の受け入れ上限を設定して現在に至ります。難民受入数は100万人を突破していると思います。ちなみに世界一はトルコで、300万人を突破しています。先進国の中ではドイツが最大です。

日本の正式難民認定は1000人程度だと思われますが、いろいろな仕組みがあってよくわかりません。すいません。しかしドイツは日本の1000倍規模の受け入れだと言えそうです。「難民受け入れがよい」とは簡単には言えません。ドイツでは、難民政策が国内の排外主義に火をつけています。「社会に差別が広がった」という意見も多い。難民が暴力を受けるケースが増えています。そして難民が絡む犯罪が起きるたびに政権批判も強まりました。与党キリスト教民主・社会同盟は、難民受け入れ反対勢力に押され、地方選挙で苦戦。メルケルさんは政界引退を表明しました。

メルケルさんの「寛容」は、「不寛容を助長する」という皮肉な副作用をもたらしました。「寛容」という言葉には、宗教や民族の要素を多く含んでいます。現在の「多様性を受け入れよう」というニュアンスとはやや異なります。それだけ根深く、難しい問題なんですね。今後アフガニスタン問題で、欧州に難民が大量流入する可能性も出ています。私たち日本人も、「寛容さ」について、しっかり考える時期だと思います。

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