ビジネス構造を理解する
ビジネス誌の決算書特集を元に、企業のビジネス構造を取り上げます(2020年末時点分析、少し前で恐縮です)。その中で、まず外食業界を見てみます。多くの企業は、感染症不安の中で大きく売り上げを落とし、その後徐々に回復基調にあります。しかし同じ傾向にありながら、決算では明暗が分かれている。勝ち組は、コメダHD(珈琲)と壱番屋(カレー)。負け組は、サイゼリヤと松屋フーズHD(牛丼)。この違いは何か?
勝ち組は、FC(フランチャイズ)主体、負け組は直営主体です。FC比率を見ると、コメダ96%、壱番屋87%に対して、サイゼリヤ0%、松屋1%。FC主体でどうやって利益を得ているのか?コメダの例だと、ロイヤルティー(本部への上納金)は売上げの1割程度でそれほど高くない。稼ぎ頭はFC店へのコーヒーやパンの卸売販売です。これにより、コメダの売上原価は売上比64%と高いけど、販管費が16%しかかからない。一方サイゼリヤの売上原価は39%と低いけど、販管費が77%と激高で、この段階で赤字です。人件費や家賃などの固定費負担が大きく、販管費負けしている。結局、コメダもその分が各店舗(FC)にしわ寄せが行ってるんじゃない?と思いますが、別の記事を読むとそうでもないようです。ロードサイド立地が3密を避けて有利に働いている。新商品(フード)も好調で、各店舗の業績は良いとのこと。同じ業種でもビジネス構造によって経営が左右されるのです。
同様にビジネス構造で業績が変わる事例が、ゼネコンです。決算によると、受注高減少が相次いでいる。しかし増えている企業もあるんです。その明暗を分けたものは、「土木比率」と「建築比率」。受注高に占める土木比率が高い企業はプラス、反対に建築比率が高い企業はマイナスの傾向がある。土木は道路やトンネルなどの構造物、建築は民間のビルや物流施設などです。国土強靭化、インフラ老朽化対策の公共工事は底堅い。実際、建築主体の大手ゼネコンが軒並みマイナスなのに対し、土木比率の高い五洋建設(海洋土木)や東亜建設などはプラス。やはりビジネス構造の違いで明暗が分かれています。
決算書は経営結果の成績表であると同時に、健康診断のための基礎資料でもあります。決算書を見る時は、「なぜなぜ精神」で、その業界、企業の特徴を見つけ、ざっくりした要因分析をしたいですね。