知識創造のはなし

「知識創造」って何だ? 「価値創造」なら聞いたことあるけど。今回は、「組織の知識創造理論」(SECIモデル)について取り上げます。このSECIモデルを理論化したのは日本人で、野中郁次郎一橋大学名誉教授です。この方、日本の(世界でも)経営学の重鎮で、私が企業研修を担当していたときにお世話になった大学教授の方々が、みな高くリスペクトしていました。私自身はお会いしたことはありません。

この理論はイノベーション創出のモデルだそうですが、「斬新なアイデア」の発想法ではなく、非常に地道で堅実なステップを示しています。だから誰でも参考になりそう。まずここでの「知」は知識・知見・知恵など大きくとらえてください。で、私たちが持っている「知」を、「形式知」と「暗黙知」に分ける。「形式知」とは「言語化・記号化された知」のこと。よく言う「見える化」です。他方「暗黙知」とは「個人に体化された知」のこと。見える化されていないノウハウやスキルです(頭の中にある状態)。この二つの知を循環させて、上昇運動させるのがSECIモデルです。

まず暗黙知からスタート。①共同化(暗黙知→暗黙知)。個人単独の暗黙知を複数(個人間)の暗黙知にする。次に②表出化(暗黙知→形式知)。個人間の暗黙知を集団の形式知にする。チームで見える化するという感じです。さらに③連結化(形式知→形式知)。様々な形式知を組み合わせて体系化する。「物語る」。単なる「ストーリーという名詞」ではなく、「物語るという動詞」であることが重要。そして④内面化(形式知→暗黙知)。組織レベルの形式知を実践する。その過程で、1ランク上の新たな暗黙知が産み出される。ここから①②③④と繰り返し、「知」が拡大再生産する。確かに「ナイスアイデアのひらめき」ではなく、地道で堅実ですね。イノベーションというより、改善に近い。でも微修正ではなく、大きな書き換えですね。「進化」という表現がピッタリくる気がします。ゼロベースの大変革や変身ではありません。

日常業務にあてはめてみましょう。まず(0)個々人の経験やスキルが頭に中にある。①それをリーダー・メンバー間や同僚間で共有する。②それらを体系化し、マニュアルにまとめる(言語・図→見える化)。③マニュアル群をノウハウとして組織文化に昇華させる。④マニュアルを実践・反復し、新たな気づきやスキルを頭と体に貯めていく。→①②③④。こんな感じですね。日常業務で頭や体に蓄積された「暗黙知」がないかを、考えてみましょう。もしあるなら(いやきっとある)、形式知化したい。この連鎖そのものがイノベーションなんですね。

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