価値融合について考える

文部科学省は、高校の普通科を再編し、文系・理系などの枠組みを超えた「学際融合学科(仮称)」と地域社会の課題解決を目指す「地域探究学科(同)」の2学科の新設を認める方針を固めています(最速2022年春から)。すごいですね。中学3年生の時点で自分の将来を含めた進路を決めるのか。商業高校や工業高校などの専門学科は実績もあるし、わかりやすいけど、これは不透明すぎて選択するのは難しいでしょうね。今回はこのうち「学際融合」について考えます。

今、大学ではこの学際融合(文理融合)が進みつつあり、その前提にはリベラルアーツ重視の発想があります。その上で、①教養系、②グローバル系、③学際融合系に分かれるような気がします。大学時代を前半教養、後半専門と分けるのではなく、4年間リベラルアーツの習得に継続して取り組む、という考え方。広い視野をもち、多様な価値を融合できる人材を育成したいのでしょう。教養系だと、国際基督教大学(ICU)教養学部、秋田の国際教養大学あたりが有名ですね。グローバル系は、早稲田大学国際教養学部や立命館アジア太平洋大学(APU)あたりでしょうか。

今回フォーカスする学際融合系は、慶應義塾大学SFC、名古屋大学情報文化学部、筑波大学情報学群などが知られています。研究分野は、おおまかに情報(ICT)、環境、生命、デザインあたりが主軸のようです。これらが縦割りではなく横断・融合するイメージ。研究領域は比較的自由で、プロジェクト的に活動する。通常授業もグループワークによる問題発見・解決型のものが多いようです。既存の枠に捉われないダイナミックな発想や行動が鍛えられる。落合陽一さんも筑波大学情報学群の出身です。たしかにユーニークな人材がいそう。

いいことだらけのようですが、専門分野の深化という意味では物足りないかもしれません。「専門性を極め、世の中の真理を解明する」という従来の期待からは距離がある。しかし、テクノロジー、社会学、経営学などが融合して付加価値を創出する流れは不可逆的です。今後この分野の学問ニーズは高まっていくでしょう。

ただし、実力のある大学ですら、やっと基盤ができつつある段階です。一気に普通科高校に導入して追いつくのでしょうか? 教える先生はいるのか? 中学生が進路判断できるのか? 教材や授業ツール(ICT)は整備できるのか? ただ単に「理系と文系に分かれず、3年間数理も国社もやる」というだけでは負担が増すだけ。本当に学際融合できるかは心配です。進学大学の受け皿も決して多くはない。しかし大学を待たずに、前段階である高校から一気に導入する発想と意志は評価できます。今後大いに注目ですね。頑張れ高校生!

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