選択肢と選択基準

現代をVUCAの時代とよく言います。Volatility(変動性)、Uncertainty(不確実性)、Complexity(複雑性)、Ambiguity(曖昧性)の頭文字をとってVUCA(ブーカ)。社会の将来予測が困難になっている状態を示す言葉です。現在の感染症脅威もまさにVUCAです。こんなことになるなんて誰も予想できません。私も令和2年の年始には「今年は東京オリンピックが楽しみだ」と言っていました。まさかの未来ですね。

VUCAの時代に必要なのは、「選択する力」だと思います。「正解を出す」のではなく、「選択する」。正解かどうかなんて、その時点ではわかりません。「AIで未来予測して、絶対解を算出する」なんてできない。なんせ曖昧だから。人間の力で、仮説を立てて、意思決定する。この力が求められます。では「選択する力」をつけるにはどうしたらよいか? 答えは二つ。「選択肢を増やす」ことと、「選択基準を磨く」こと。

まず選択肢を持っていなければいけません。一択では選択にならない。YES or NOの二択も極端。やはり選択肢は3つ以上ほしい。じゃあ、たくさんあればいい? 「ジャムの法則」って知っていますか? スーパーの試食で、6種類のジャムと24種類のジャムを並べた。結果の購入率は、6種類の場合は30%、24種類は3%だった、という実験です。選択肢が多すぎると、判断しづらくなるんです。では選択肢はいくつが妥当なの? この実験を行ったコロンビア大学の教授は5~9までだと言っています。うーん、戦略オプションだと多いし、自販機の商品だと少ない気がする。まあ意思決定の選択肢なら、5くらいまでですかね。

選択肢の次は、選択基準です。なぜその選択肢を選ぶかの理由。これは「問い」によって異なると思います。理念、売上、コスト、スピード、リスク回避等。その都度ウエイトが変わる。一本調子ではいけない。でもそれじゃあ基準はケースバイケースなの? だから磨くんです。選択(意思決定)の場数を踏んで、自分の軸を持つ。価値観に近いかもしれません。VUCAなんで、毎回正しい選択ができるわけではない。成功、失敗を繰り返し、修正しながら軸をつくっていく。

もし、作った企画書に選択肢が抜けていたら、一旦立ち止まって考えてみましょう。選択肢の記載自体がMUSTではなく、頭の中にあることが大切。いずれにせよ、自分で決めるのも、チームで結論を出すのも、相手と交渉するのも、私たちは今「選択が重要な時代」の真っただ中にいるようです。

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