シグナリング
先行き不透明な時代、今後は様々なリスクに備え、経営や業務のやり方が根本的に変化していくと思われます。経営戦略についても、今までのような競争戦略型スタイルが変わってくると推察します。世界的な危機を脱するには、「競争相手からぶんどる」という旧来型経営を見直す時期なのかも。競争よりも独自性、さらには協創へ。ポーターからバーニー、さらに次へという流れかな。同じ市場を、同じような企業が、領土を奪い合う時代ではない。独自のリソースをベースに、付加価値を高め、相乗効果で難局を乗り越える。競争がなくなるわけではありませんが、市場での存在意義(固有価値)がますます問われます。そういう時代では、「情報を隠して戦う」モデルは通用しなくなる。そこで今回は「シグナリング」を取り上げます。
シグナリングは、「ゲーム理論」でよく使われる言葉です。私は戦略策定上、ゲーム理論は非常に重要だと思うのですが、経営戦略やマーケティングで取り上げられることが少ない。なぜか? 経営学ではなく、経済学から発展したものだからです。それはさておき、ゲーム理論の基本。まず「情報が遮断されているか」。遮断されていなければ、交渉か推察をしてWIN-WIN(パレート最適)を目指す。情報が遮断されている場合は、「シグナリング」する。シグナリングが有効であれば、交渉・推察に持ち込みます。シグナリングが無効であれば、「ナッシュ均衡」(必然的決着)になるか、「チキンゲーム回避」(最悪を避ける)をする。一方的ですいません。チンプンカンプンの場合は、ぜひネットや本で調べてみてください。
「シグナリング」とは、自分から情報や行動計画をほのめかし(シグナル≒サイン・メッセージ)、相手の行動に一定の影響を与えることです。家電量販店が「他店徹底対抗!」と宣伝しているのは、お客さんではなく、他店への「値引き合戦はやめよう」というシグナリングです。総取りが無理な状況では、最終的にWIN-WINがいいわけですから、双方が情報を開示するか、一方がシグナルを出して相手の行動に影響を与えることになります。ただし談合は違法なので十分注意する。技術がいるのです。このシグナリングの巧拙が経営結果を左右します。特にこれからの時代は「隠しに隠して不意打ち」などは少なくなるような気がします。まずは自分で積極的に情報を取りにいく。その上でシグナリングを有効に、そして適切に活用しましょう。