企業経営分析の実際
ご承知のとおり今世の中は、感染防止と経済復活の両立が大きな社会課題になっています。休業している店舗や小規模企業も多い。私は、以前からボランティアで中小企業さんの経営診断をやっています(中小企業診断士資格の更新条件)。今までチームや個人で数社行い(運送業、塗装業、IT企業など)、お付き合いが続いている会社もあります。最近は連絡できていませんが、この状況で大丈夫か心配です。で、今回は「経営分析の実際」についてお話します。
大企業の経営分析って、ROEとかNPVとか難しいことやりますよね。でも中小企業の経営をリアルに分析する場合は、少し観点が異なります。ただし大企業も中小企業も、売上を最大化する、コストを抑える、利益を出し続ける、このポイントは同じです。その上で、中小企業は「まず安全性を最優先する」というのが私の考えです。具体的に重視するのは2つ。損益分岐点、現預金月商数です。会社が倒産するってどういう時でしょう? 一般的には「支払不能」と「債務超過」の二つです。私が営業だったころは、手形決済が多かったので、よく「不渡2回出したら銀行取引停止で廃業だよ」って聞きました。実際1回不渡出したらうわさになっていた。銀行引き落としの場合でも、入金が1日遅れると大騒ぎでした。取引先への品代、銀行借入金の返済、従業員の給料、これらを支払えないと社会的にはENDです。
では債務超過はどうでしょう。経営上、決算で赤字でも単年度ならよくあること。数年続くと心配で、内部留保を食いつぶしていく。それがゼロになっても続くと累積赤字です。さらに続いて自己資本(純資産)を全部食い尽すと「債務超過」になります。保有資産を全部現金化しても債務を返済できない状態です。そうすると銀行や仕入先が融資や商品を引き上げたり、資産を差し押さえたりする。で営業不能で倒産。でも実際は債務超過で即廃業にはなりません。私も債務超過の企業さんを診断したことがありますが、立派に経営している。銀行が見放さなければ大丈夫なんです。銀行は過去の「実力」と経営者の「人物」を見ている。結局、信頼と人間性なんです。うん、そうだよね。
だからって安心できないので、私は損益分岐点とキャッシュの残高をしっかり分析します。売上がこのラインを下回ると赤字になる。現預金は最低月商の2ヶ月分は持っていたい。でも現在は、2~3ヶ月の売上なんて吹っ飛んでいる状況です。本当に心配です。リアルな経営感覚が大切な時代だとつくづく感じます。