フレーミング効果
以前、監査部で公認内部監査人資格の勉強をしていた時に、「フレーミング効果」というものを学びました。今回はこのフレーミング効果についてお話します。これ聞いたことありますか? フレーミング効果とは、一言で言うと「事象の提示の仕方が、思考に影響を及ぼす」ということです。よくあるのが、コップに半分入った水を、「水が半分しかない」と思うか、「水が半分もある」と思うかで、まったく印象が異なるという事例。名称の「フレーム」は「解釈の枠組み」を意味しており、受け手の固定観念(枠組み)によって、色がかかってしまうということです。これは発信者の伝え方が、受け手の印象や判断に影響を与えるということでもあります。事象の見せ方や説明の仕方によって、印象を操作できるということ。
なかなかヤバイ効果ですね。監査だと、例えば同じ会計情報でも、その見せ方や表現の仕方で印象が変わるので、監査する側は、それを承知の上で実査に臨む必要があるのです。もう少し例を言います。日常生活でのお金の支出(例:新しい自転車購入)を、「出費」と言うのと「投資」と言うのとでは、受け入れやすさが全然違う。「平日割引」と「休日割増」も同じことですが、お得感は段違い。「5年後死亡率10%」と「5年後生存率90%」も同じことを言っていますが、印象はずいぶん違いますね。スポーツでの「1勝4分」と「5戦無敗」も同様。また意思確認では、「同意する場合のみチェック」と「同意しない場合のみチェック」で結果は大きく異なります。後者のほうが圧倒的に同意率は高まる。事実、臓器提供に関して同意の取り方が後者のオーストラリアの同意率は99%なのに対し、前者のデンマークはわずか4%です。
私たちはフェアに仕事をしているので、印象操作をすることは好ましくないし本質的ではありません。しかし、逆の立場では判断を見誤らないようにしなければなりません。また交渉の知恵として、許される範囲での「節度ある工夫」はありでしょう。実際世の中の広告コピーはほとんどこの技術を使っています(嘘はつかない)。「タウリン1g配合」ではなく、「タウリン1000mg配合」とアピールする。技術的には「逆サイドから見る」、「単位を変える」の二つが王道です。でも、繰り返しますが、フェアな姿勢(ユーザー視点や全体最適など)が前提ですので、そこは意識した上で上手に工夫しましょう。この効果は日常生活にも応用できるので、正しく賢く使いたいですね。