情報発信について考える
広告の仕事をしていたころ、よく「4媒体」という用語を使いました。主要な広告メディアで、テレビ、ラジオ、新聞、雑誌の4つです。それぞれ狙いが異なり、テレビは多くの人に一気に認知を広げる、新聞は提供価値をしっかり伝える、雑誌はコアユーザーにターゲットを絞り込む、それにラジオを加えて、メディアミックスする。その他にも屋外広告や交通広告等がありますね。今は4媒体にインターネットを加えた5つが主要メディアです。
昔はネットなんてほんの少しでしたが、どんどん伸びて、2019年に、ついにテレビを抜いて最大の広告金額になりました。ちなみに、ざっくりのイメージですが、インターネットは2.1兆円、テレビは1.9兆円、新聞0.5兆円、雑誌0.2兆円、ラジオ0.1兆円です(様々な統計あり)。ネット広告は機動性に長け、広告主も幅広く、日々進化しています。
以上はあくまで広告ですが、報道、広報、情報発信という意味でも、今やSNSも含めてネットの力はすごい。圧倒的スピードで、個人や小規模組織が情報を拡散できる。工夫次第で低コストでそれを実現できる。一方、デマ、やらせ、都市伝説など、怪しいものも多い。従って、依然としてテレビ・新聞の情報は信頼性が高いです。しかし、どうしてもマスコミ向公式発表(政府・企業・警察など)がベースになるので、深さはないですね。なかなか調査報道(記者が独自で調べる)は難しい。これからは「テレビ対ネット」なんて構図もありそうです。
さていきなりですが、最近大変面白いミステリー小説を読んだのでご紹介します。「報道のあり方」を考えることにもつながる内容です。タイトルは「天上の葦」(角川文庫)、著者は太田愛。太田愛?脚本家から小説家になった方です。「幻夏」という作品が有名なんですが、私はこちら(天上の葦)のほうが好きです。少しだけさわりを。「白昼、老人が渋谷のスクランブル交差点で何もない空を指さして絶命した。死の間際、あの空に何を見ていたのか」。起承転結がしっかりしていて、とてもレベルの高いエンターテイメントです。冒頭の不可思議な謎、個性的な登場人物、意外な展開、加速する結末。報道について、あらためて考えさせられます。上下二冊ですが、ご興味がある方はぜひ。
さて情報発信。例えば、私たちが会社で何かを従業員に案内する場合どうしていますか? まずは文書やイントラ掲示板などですが、それだけ? 「知らなかった」と言う従業員に、「こっちはちゃんと文書で発信してますよ」では不親切。本当に価値ある情報なら、ぜひ知ってほしい。そのために、あの手この手で工夫して露出を増やしましょう。その工夫で自分も成長できるし、相手はきっと喜んでくれますよ。