ファーストペンギン

「ファーストペンギン」って聞いたことあるでしょうか? 群れの中で最初に水に飛び込むペンギンです。南極で生きていくためには、時折海に飛び込んで魚を獲らなければならない。でも海にはシャチやトドなどの肉食獣が待ち構えています。逡巡するペンギンたちの中で「我に続け!」と真っ先に飛び込む勇者、それがファーストペンギン(FP)です。FPが飛び込んだ後も、大勢のペンギンたちは後に続いて飛び込みません。しばらく様子を伺い、FPが無事に獲物を捕らえているのを確認して、初めて群れが飛び込むそうです。この最初に飛び込むペンギンは何故か毎回決まっているらしい。すごいな、ファーストペンギン。

ビジネスでも、新しい事業や投資にチャレンジして先行者利益を得ることを「ファーストペンギン」と呼ぶようになりました。ハイリスクハイリターンの覚悟を讃える言葉です。日本では楽天の三木谷社長がよく例に出ます。しかし当然ハイリスクなので、失敗した時のダメージも大きい。「FPはカッコいいけど、割りに合わない損な役回り」と言えるかもしれません。一方でリスク回避だけだと、新しいチャンスは永遠にものにできない。

これ日常にも当てはまります。GEなどのグローバル企業が以前よくやっていた「窓開けテスト」というものがあるそうです。将来の幹部候補生(8名程度)を本社に集め、研修を実施する。まず会場に参加者を入れて、しばらく待たせます。そして部屋の温度を少しずつ上げていく。室内に調節器はないし、スタッフはなかなか来ない。そんな中で、誰かが最初に「暑いですね。窓を開けましょう」と言う。幹部たちはこの最初に行動した人を評価するそうです。そもそも幹部候補生なんだから基礎能力や実績は十分。その中で自然にリーダーシップを発揮できるかどうかが重要らしい。実際、はずれなくその後幹部として活躍するそうです。些細な行動だけど、これもFPかも。

私が以前社内研修の事務局をやっていた時にもそういう人いました。指導教官が問い掛けると、真っ先に自分の考えを発信する。決して出しゃばりではなく、勇気をもって飛び込んでる感じでした。また広告の仕事をしていた頃、企画案が複数出てきたときに、しばしば似た状況になりました。広告評価に答などないから、最初に「C案がいいと思います。なぜなら・・・」と発言するのは勇気がいる。リーダーだった当時、私は若いメンバーによく言っていました。「経験の浅いあなたの意見は、最後に聞いてもほとんど役に立たない。でも最初に聞くと非常に参考になる。だから勇気をもって最初に言いなさい」ってね。「ファーストペンギン」になって、先頭で海に飛び込んでみましょう。怖いけど、すごく気持ちいいかもよ。

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