模倣する力

みなさん在宅勤務が長くなり、ZOOMやTEAMSなどのオンラインツールを駆使して、リモート業務に取り組んでいることと思います。私生活でも、LINEやTwitterなどのSNSの利用機会が増えたのではないでしょうか。この中のメッセンジャーアプリに注目してみます。LINEのようなチャットコミュニケーションのこと。代表的な4つについて、世界での利用状況を比較します。

まずはWhatsApp。Facebook社が買収し、全世界に広がり、アクティブユーザーは13億人。広告無しのシンプルさが売りです。次にFacebookメッセンジャー。これもFacebook社の運営で、アメリカを中心に13億人。3つ目はWeChat。テンセント社(中国企業:本拠地は深セン)の運営で、中国中心に10億人。そしてご存知LINEで、日本中心に2億人です。「テンセント?アリババは知ってるけど、あまり聞いたことないぞ」という方もいるでしょう。今回はこのテンセントを取り上げます。

同社は中国発のIT企業で、代表は馬化騰(ポニー・マー)。中国のビル・ゲイツと言われています。彼はシャイで職人肌なので、メディアにあまり出ないそうです。事業の柱は、メッセンジャー、ゲーム、ペイメント(決済)の3つ。WeChatは、このうちのメッセンジャーです。時価総額はざっと40兆円で、世界ベストテン内に入っています(日本最高のトヨタは19兆円くらい)。

テンセントの経営哲学は「超越式模倣」です。とにかくマネする。もちろんそのままではなく、徹底して研究し、分析し、工夫する。特に「ユーザー体験」を極限まで分析する点がすごい。ユーザーターゲットを中国人に絞り込み、その利用方法をとことん研究しています。既存システム(コミュニティ)からの反応・アイデアの吸い上げはもちろん、具体的な行動観察も徹底している。テンセントはオフィスの下にインターネットカフェを設け、そこでのユーザーの行動を直接観察しています。

そして独自機能を追加して差別化する(同質化ではなく差別化)。まずマネからスタートし、相手を超越して差別化し、結果的に打ち勝つ。「マネて勝つかぁ。中国っぽいな」と思いますが、ここまで徹底するとすごい。テンセントからの学びは、「成功事例は活かす。ユーザー分析を徹底する。独自に工夫する」です。まさに「模倣する力」。私たちも「ベストプラクティス」という言葉で、先行事例・成功企業をよく参考にしていますね。テンセントの取り組みを大いに「マネ」して、付加価値を高めていきましょう。

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