イノベーションの普及
「ロジャース曲線」ってご存知でしょうか? イノベーション採用者のタイプ別度数分布です。採用の早い順から、①イノベーター=革新的採用者(2.5%)、②アーリー・アダプター=初期少数採用者(13.5%)、③アーリー・マジョリティ=初期多数採用者(34%)、④レイト・マジョリティ=後期多数採用者(34%)、⑤ラガード=採用遅滞者(16%)の5つのタイプに分類されます。
私自身は③の場合と、④の場合があります。①+②=16%が普及の壁で、これを超えると普及率が急激に上昇すると言われています。実際、家庭用エアコンやカラーテレビは、16%あたりで普及率が大きく跳ね上がっています。「お隣のお隣はクーラー入れたらしいわよ」ってな感じで拡大していきます。しかし多くの新商品・新サービスは16%を超えずに失速する。世の中全体の16%ってすごく大きな数なんですね。
さて話は飛びますが、2019年秋の消費税増税と同時に、店舗でキャッシュレス決済をするとポイント還元などが受けられる「キャッシュレス・消費者還元事業」が導入されました。景気対策です。その直後の日経リサーチ調査結果を見て驚きました。コンビニのキャッシュレス決済が67%を超えたというのです(19年11月調査)。三分の二以上です。そしてキャッシュレス決済の中で、QRコード決済がまさに16%くらいでした(壁超え!)。
その後、QRコード決済はどんどん普及し、今や利用率が50%を超えています(2020年12月インフキュリオン社調べ)。コンビニだけではなく、全体での利用率が51%です。コンビニでは73%に達しています。感染拡大に伴う現金忌避・接触忌避が後押ししているのも事実ですが、16%の壁を超えると普及が加速する象徴的な事例だと思います。
ちなみに、クレジットカードの利用率は全体で79%です。全キャッシュレス決済サービスのうち、最も利用されているサービスは「楽天カード」の43%、次いで交通系ICカード(Suica・PASMO等)の37%、3位が「PayPay」の34%。この上位3つが抜きん出ている。QRコード決済の中では「PayPay」の圧勝になっています。
イノベーションに対する反応が早いか遅いか、これは良い悪いではありません。ただし、ロジャース曲線の「16%の壁」は知っておいて損はないです。特にBtoC企業の方は、仕事で大いに役立つと思いますよ。