多重チェックの落とし穴

業務のミス削減策でよくあるのが、いわゆる「チェック」。計算結果や、原票との整合性などをチェックします。多くの会社で日常的に様々なチェックが行われていますね。本人チェック(見直し)、リーダーチェック、第三者チェックなどなど。このチェックについて次のような実験結果があります。1回チェック~5回チェックまでの中で最も効果が高かったのは2回チェック(本人を除き2回)。3回以上のチェックではむしろ効果が下がった(詳細は割愛)。これだけで決めつけはできませんが、なんとなくわかります。

ここで例え話を挿入。昔賢人が街にやってくるということで、「もてなしの酒樽を用意し、住民全員で1杯ずつ酒を樽に入れよう」ということになった。そして賢人に酒をふるまったところ中身は水だった。なぜ? 住民は「自分一人くらい水を入れても影響ないだろう」と全員が考えた。お話しをもう一つ。畑の中にひばりの親子がいた。農家が「そろそろ村全員で刈ろうか」と言い合っていた。子ひばりはビビッて「早く逃げよう」。親「まだ大丈夫」。何も起きずにしばらくたって、農家「そろそろみんなで刈ろうか」。親ひばり「まだ大丈夫」。何も起きずにしばらくたって、農家「そろそろ俺が刈るか」。親ひばり「すぐに逃げましょう」。

この二つの訓話での学びは? そうです。みんなの中では自分が薄まる→甘えが生じる→本気で取り組まない、ということ。「見逃しても誰かが見つけるだろう」という油断が広がる。同じような例が稟議書の印鑑の多さ。「多くの人が内容を見ているはずだから大丈夫だろう」と中身も見ずに押印。これはまずい。

私が新入社員のころ、給与計算は手作業でした。私も計算日は夜遅くまで電卓をたたいていました(先輩の女性は全員そろばん)。勤務表(紙)に鉛筆で手書きされた残業時間を、まず一人が合計して記入。チェッカーが再度計算して一致を確認します(1回チェック)。「あとで間違いが発見されたら責任は全てチェッカー」という決まりがありました。ミスがあるとリーダーがチェッカーを叱ります。だからチェッカーは真剣そのもの。緊張感あったなあ。この「チェック重視の姿勢」はその後も大変役立ち、販売パンフレットの文字校正などにもしっかり活かされました。「あ、誤植だ。10万枚刷っちゃいました」これはダメ。業務ミス削減は永遠のテーマ。粘り強く取り組みたいですね。

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