学びのプロセスを体得する
大学入試改革の二本柱、「英語民間試験の活用」と「記述式問題の導入」が両方とも頓挫しています。後者が白紙となった主な理由は、採点のミスやぶれが解消できないから。文部科学省は、2025年以降の共通テストへの記述式問題導入を見送る方針です(21年4月時点)。記述導入の目的は「表現力や判断力をみるため」。判断力、思考力などはマークシートでも概ね測定できるので、表現力を重視するということだったのかもしれません。導入予定科目は国語と数学でした。
そもそも勉強する目的って何でしょう? 目的は二つ、①コンテンツ(具体的内容)を吸収すること、②学びのプロセスを体得すること。①コンテンツを知って、それを実生活や仕事に具体的に活用する、②学びのプロセスを訓練して、そのコツを身につける。「学校の勉強なんて無意味だ。微分積分や三角関数なんて一生使わないぜ!」なんて声高に言ってる人は、①しかわかっていません。抽象化する思考力をつけるためには、目的②が必須です。国語と数学は特に。
学びのプロセスとは「吸収→理解→応用→表現」。中身(①)が何であろうが、何か新しいことをインプットし、処理し、アウトプットするためには、このプロセスを訓練して体得する必要があります。スポーツでもよいです。これがトレーニングされていないと、社会に出てから通用しません。仮に理解までいっても、「→応用→表現」ができないのです。言葉と数字という「概念」で思考し、応用(アナロジー)し、どんどん自己成長する。これが求められます。落合陽一さんの著書にも近いことが書いてありました。
話が飛びますがここでお話しを挿入。毎日ゴロゴロ寝てばかりいる子ども。父「そんなにゴロゴロ寝てばかりいないで勉強しなさい」。子「なんで勉強するの?」。父「いい学校に行くためだ」。子「いい学校に行ったらどうなるの?」。父「いい会社に入れる」。子「いい会社に入ったらどうなるの?」。父「お金持ちになれる」。子「お金持ちになったらどうなるの?」。父「毎日ゴロゴロ寝てくらせる」・・・。
今の時代、親は真剣に目的②を伝えなくてはなりません。でもただ大声を出してもダメで、知的好奇心を持たせるよう、上手に導く必要があります。「テストに記述式を導入すれば、表現力が強化される」という考え方は少し安易かもしれません。興味関心を持って、楽しく勉強を続けたいものですね。