哲学から学ぶ
「寝ながら学べる構造主義」という本を読みました。寝ながら読めたけど、寝ながら理解することはできませんでした。文章は読みやすいけど、内容は難しい。構造主義は20世紀の哲学で、主にフランスで展開されました。文化人類学者のレヴィ=ストロースが創始者です。構造主義をあえて一文で表すと、「人間は、社会と文化の根底にある、目に見えない構造によって支配されている」という考え方。
構造主義は実存主義との対比で考えると理解しやすいです。実存主義も同じ20世紀の哲学で、その代表はサルトル。レヴィ=ストロースとサルトルは激しく論争し、結果的に構造主義が勝ちました。実存主義は、「実存は本質に先行する」とし、「人間は、自由に行動し、自分の意思で主体的に人生をつくれる」と考えます。つまり、構造主義は、背後の本質的構造に支配され、実存主義は、自由な意思・行動で主体的に生きられる。で、構造主義が勝った。私たちは、主体的に判断や行動をしていると信じていますが、実はその自由はかなり限定的だということ。構造主義は人間を規制する社会・文化的構造を重視する哲学で、「世間が人間をつくる」ってことかな。なんか元気出ないですね。
西洋哲学の歴史をざっと見ると、古代哲学(ソクラテスやプラトン)→近代哲学(デカルト~ヘーゲル)→20世紀哲学、となります。20世紀哲学をさらに分解すると、実存主義→構造主義→ポスト構造主義、と流れる。そして今は21世紀哲学。うう、深追いせずに構造主義に戻ります。
構造主義から何が学べるでしょう? 私の印象ですが、実存主義は欧米的、構造主義は日本的だと感じます。自分・個中心の欧米に対して、関係性を重視する日本。日本人は、社会、文化、さらに人間関係による背景の構造に重きを置きますね。だから目の前の現象面だけでなく、そのバックボーンも十分に理解することが求められる。悪い例ですが、よくあるのが「この人、本気で自分の思いを発言してるのかな?なんか組織の役割や立場に言わされてる感じだなあ」なんてこと。これが社会・文化なのかもしれません。でもそれが行き過ぎると「忖度」になっちゃう。うーん。
よくグローバルの議論で、ローコンテクスト文化、ハイコンテクスト文化などと言います。前者は欧米的文化で、主張を言葉で直接表現する。後者は日本的文化で、直接的な言葉は少なく、阿吽の呼吸です。両方理解しつつグローバル時代に少しでも対応したいものですね。それにしても哲学は難しいなあ。