ベストバランス

バランスという言葉は、主に「つり合いが取れている状態」「均衡」「安定」「調和」などを意味します。「バランスがよい」ほうが「バランスが悪い」よりもいいに決まってる。しかし『バランス⇔アンバランス』ではなく、『バランス⇔個性』と捉えると必ずしも絶対善ではなくなります。「君はバランスがいいけど、尖った個性がないね」と言われると少し残念です。「無難でつまらない」といった意味にもなる。うーん、難しい。例えば「文武両道=バランス」かと言うと違いますね。一見相反する尖った部分(100点)を二つ同時に満たす(合計200点)といった感じ。一方バランスは両方50点(合計100点)といったイメージがあります。妥協、中途半端、折衷案など、なんとなく弱々しい印象です。

しかし自然科学の世界ではバランスはとても強いのです。バランスが多様性につながる。バランスよく生息・分布し、バランスよく多種類が存在することで絶滅を回避することができる。有名な話ですが、アリの中の10%は働きません(90%は働き者)。その10%を除くと、残りのうちの10%がまた働かなくなります。それには意味がある。なぜか。100%全員が働き者になると全滅するリクスが圧倒的に高まるからです。それを本能的にわかっている。バランスをとるということは種が存続するために必要なんですね。

以前、NHKEテレ「奇跡の星」という番組があり、よく見ていました。「地球の神秘」を描いたドキュメンタリーで、地球が奇跡的なバランスで成立していることを描いていました。空気中の酸素の構成比は20.95%で何万年も変わっていません。環境、生態系、人口は変化しているのに。ちょっと酸素が少ないと窒息するし、ちょっと多いと火災が頻発して止まらない。私たちが生きていく上で絶妙な20.95%。10%~30%じゃダメなんです。まさに奇跡のバランス。

水にお金がかかる時代ですが、いまだに空気はタダです。しかし空気がなくなると数分で死んでしまう。その酸素をつくる壮大なストーリーはこうです。北アフリカの砂嵐がアマゾンの熱帯雨林に届き、植物の栄養になる。植物を通じて水分が大気中に上昇して雲となる。雲がアンデス山脈にぶつかって雨となり、ミネラルを削り出す。ミネラス豊富な水が海に注ぐ。その栄養で海中の珪藻が大繁殖し、光合成を行い、酸素を大量に放出する。すべてが奇跡的なバランスでつながっている。そう考えると地球は奇跡だし、地球以外に生命体なんていないのでは、と思ってしまいます。自然科学に限らず、日常でもベストバランスを考えて思考・行動したいとあらためて思います。

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