孫子の兵法
以前受けた研修で「最高の戦略教科書 孫子」(守屋淳著)という課題図書を読みました。孫子自体は2500年前の書物ですが、ビジネス、会社経営の学びになることが多いと言われます。確かにそうなのですが、決定的に違うのは「戦争は失敗が許されない」という点。大きな失敗をすると、人は死に、国は滅びます。会社のようにPDCAは回せない。つまり「早く・多く挑戦し、その失敗から学び、成長する」というサイクルを前提にはできないということです(もちろん小さな戦からの学びはあります)。したがって最も重要なのは『負けない』こと。ざっくり言うと、「正攻法で対峙し、相手がスキを見せたら一気に短期決戦で勝負をつける」(不利であれば戦わない、傘下につく、外交で和解)。要するに負けない(不敗)ということ。
この構図を作るために非常に重要なのが「情報」です。相手を知らないとこの「不敗」に持ち込めません。無理に勝たなくてもいいのです。勝ってもフラフラでは第三者に漁夫の利を取られる。とにかく負けたら一巻の終わり。この本質をそのままビジネスに持ち込むのは無理ですね。しかし逆に考えると、ビジネスは死・滅亡に直結しないので、「孫子ではできないことを思い切ってできる」とも言えます。つまり「早く・多く挑戦し、その失敗から学び、成長する」。まさにPDCA回し放題。戦争ではできないことを思いっきりやり、それが組織や自分の成長に直結する。やらない手はない、ということです。
古代中国では失敗は取り返しがつかないので、自分で「失敗を体験」して成長につなげることはできません。孫子のような兵法書にまとめて「歴史」から学ぶしかない。しかし現在の私たちは成功でも失敗でもいいのです。むしろビジネスでは勝ち負けがはっきりしない場合が多い(今回は70点だな、みたいに)。結果をどう評価して、どう修正するかがすべてです。
ただし注意点を一つ。「失敗が常に許される」わけではありません。「失敗して(負けて)当然」と思うと「負け癖」がつきます。「高い目標を設定しても毎回未達だと、それが当たり前」になってしまう。「負け癖」を治す薬は「小さな成功体験」。ちなみに失敗とミスは違います。戦って敗れるのが失敗。そこを勘違いすると凡ミスの山になります。スジのよい失敗をゲットしたい。そして経験(勝でも負でも)から上手に学びを得たいですね。