ヒーローズジャーニー
塩野七生の「十字軍物語」(文庫版4冊)を読了しました。大変面白かったです。十字軍は11~13世紀にかけて全部で8回(7回とも9回とも言われる)実施されました。その中で第3回は「花の第3回」と言われ、大変派手で注目されています。それは両陣営のヒーローが活躍したから。イスラム教側のサラディンと、キリスト教側のリチャード1世(獅子心王)。この二人はなかなかの英雄で、いまだに人気があります。世界の英雄というと誰を想像するでしょう?軍事、政治、芸術、学問、ビジネスなど分野は様々ですが、世界史という点ではやはり「軍事&政治」という領域で考えてみます。しかしこれは難しい。軍事が絡むと母国には人気があるけど、相手国からすると悪の権化ですからね。それでも無理やり上げるとやはりナポレオンを想像する人が多いでしょう。この人も「欧州をメチャメチャにして最後は島流し」という印象もあるので、決定版とは言えません。
「ヒーローズジャーニー」という言葉をご存知でしょうか。これはアメリカの神話学者が提唱したもので、古今東西の神話に登場する英雄の物語を研究すると、ある共通した一連の流れがあるというもの。多くの人の心を動かし共感を生むストーリーだそうです。この考えは映画監督のジョージ・ルーカスにも影響を与え、映画「スター・ウォーズ」にもこの流れを取り込んだことは有名(?)だとか。誤解を恐れずざっくり要約すると以下の流れになります。①何かのきっかけで天命を受け、平和な故郷から旅立つ、②師(メンター)と出会い、鍛錬・成長する、③強敵(デーモン)が登場し、歯が立たず挫折する、④努力の結果強敵を倒し、故郷に凱旋する、こんな感じです。
確かによくありそうな物語。ここで重要なのが③です。③がないとお話としてまったく面白くない。ただ「旅立って成長しました」って話。やはり③がターニングポイントで起承転結の「転」。そこで②(メンター)が生きてくる。つまりメンターとデーモンがポイントだということです。人によって大小はあるでしょう。でも長い仕事や生活の中で、必ずメンターやデーモンとの出会いがあるはず。それはヒーローズジャーニーなんですね。大きく成長するチャンスでもあります。私たちにとってのメンターやデーモンは誰でしょう?でも英雄はあくまで自分自身。小さなヒーロー・ヒロインの、二つとない物語なんです。